圧着端子の断面観察で分かる品質不良・不具合品の見分け方
概要
圧着端子は、電線と端子を確実に接続するための重要部品です。
圧着品質が不十分な場合、電気抵抗の上昇や発熱、断線など、車載システム全体の信頼性に影響を及ぼします。
断面観察は、圧着部内部の状態を直接確認できる唯一の方法であり、圧着品質の良否を定量・定性の両面から判断するうえで欠かせません。



芯線と端子の密着状態
断面観察で最も基本となるポイントは、芯線と端子の密着状態です。
良好な圧着では、銅線が端子内で均一に変形し、すき間(ボイド)がほとんど見られません。
不良例:
・芯線と端子の間に空隙がある
・芯線が偏っている(中心がずれている)
・銅線がつぶれすぎて線径が変形している
これらは圧着力不足または過大圧着の典型です。
バレルの巻き込み・変形
圧着バレル(端子のかしめ部)の巻き込み形状も重要な指標です。
良好な例:
・バレルが芯線を均一に包み込み、左右対称に変形している。
不良例:
・芯線を十分に包み込めていない
・一方が深く折り込まれ、もう一方が開いている
・端子材が破断・裂けている
これらは金型位置ずれや圧着金型摩耗の可能性があります。
絶縁被覆のかしめ状態
絶縁かしめ部の断面観察では、被覆を適度に固定できているかを確認します。
良好な例:
・被覆が軽く潰れ、端子と密着して引張強度が確保されている。
不良例:
・被覆が全く潰れていない(かしめ不足)
・被覆が切断・裂けている(過大圧着)
・芯線がはみ出している(位置ずれ)
絶縁かしめは電気的性能よりも機械的支持の確保が目的であるため、形状のバランスが重要です。
ボイド(空隙)と酸化層
断面に見られる微小なボイド(空隙)や黒ずみ(酸化)は、導通信頼性に直結します。
不良例:
・銅線間に黒い線状の境界が見える(酸化膜残り)
・圧着後のすき間が残っている(ボイド)
・端子内に異物が混入している
これらは導電経路が不安定になり、温度上昇や抵抗増加の原因になります。
まとめ
圧着端子の断面観察では、以下の5点を総合的に評価することで、不良の早期発見と工程改善につなげることができます。
- 芯線と端子の密着状態
- バレルの巻き込み・変形
- 絶縁被覆のかしめ状態
- ボイドや酸化の有無
断面観察は単なる「外観確認」ではなく、製造条件と信頼性を直接つなぐ評価手段です。
再現性の高い観察と定量的な分析により、安定した圧着品質の維持が可能になります。
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