ISO16750とは?
初心者向けガイド
~基礎編~
車載用電気・電子部品が「実車環境で壊れにくい」ことを確認するための国際規格。
5つのパート構成、想定環境、代表試験、導入のコツをやさしく解説します。
- ISO 16750の概要
- 5つのパートと代表試験
- 実務に使うポイント(設計~評価)
1. ISO 16750の概要
正式名称: ISO 16750 — Road vehicles — Environmental conditions and testing for electrical and electronic equipment
自動車に搭載される電気・電子部品(ECU、センサ、コネクタ、スイッチ等)が、
実際の使用環境で壊れずに機能するかを確認するための国際規格です。
設計段階から量産評価まで、信頼性試験の共通規格として使われます。
2. 想定される環境

温度
-40℃(寒冷地)
~ +125℃以上(エンジンルーム)
季節による気温変化
1日の温度変化など

振動・衝撃
路面起因のランダム振動、輸送衝撃、組付け/落下衝撃など

電源変動
過電圧・低電圧・クランキング
電圧降下・瞬断・リップルなど

湿度・結露
高湿、結露、氷結・融解を通じた
腐食やリーク(短絡)

化学的影響
燃料、オイル、塩水、洗浄剤、
ブレーキ液等への耐性。

実装リスク
取付位置(キャビン/エンジン/シャシ)により負荷プロファイルが異なる。
3. 規格の構成(5つのパート)
Part | 内容 | 主なテーマ |
---|---|---|
Part 1:一般要求事項 | 用語、適用範囲、製品動作状態の定義、 合否判定の考え方などの基本ルール | 定義、試験順序、実験設計 |
Part 2:電気的負荷 | 過電圧・低電圧・電圧降下・瞬断・ などの電源に関する試験条件 | クランキング、ロードダンプ、瞬断 |
Part 3:機械的負荷 | 振動・衝撃・落下に対する耐久性 取り付け位置に応じたプロファイル | ランダム振動、SRS衝撃 |
Part 4:気候的負荷 | 高温・低温・温度サイクル・湿度・塩分 氷結/融解サイクルなど環境に関する試験条件 | 熱衝撃、湿熱、結露 |
Part 5:化学的負荷 | 薬品への曝露と腐食影響 | 薬品、塗布方法 |
4. 代表試験の例
電源瞬断 (Part2)
目的:瞬間的な電圧失陥で誤動作や記憶消失が起きないか
要点:保持電源、再起動時間、
フェイルセーフ
ヒント:リセット仕様を事前に設計
ランダム振動 (Part3)
目的:路面起因の広帯域振動で
機械強度を確認
要点:取付方向、加速度PSD、
治具剛性
ヒント:共振点のスイープ探索を
先に実施
温度サイクル (Part4)
目的:反復膨張収縮による
はんだ・樹脂の疲労評価
要点:上限/下限温度、遷移時間、滞留時間
ヒント: 通電・動作環境の準備が
必要。動作モードを反映
塩水噴霧 (Part4)
目的:沿岸/融雪剤環境での
腐食・接触抵抗悪化
要点:曝露/乾燥サイクル
ヒント:電気接点は低電流DCでの
劣化もモニタリング
クランキング降下(Part2)
目的:始動時の電圧降下に対する
機能維持
要点:最小動作電圧、リスタート電圧
ヒント:電源保持や
ブラウンアウト検知回路を検討
輸送衝撃(Part3)
目的:輸送/取扱い時の偶発衝撃での損傷確認
要点:衝撃応答スペクトル、
パルス幅、実装方向
ヒント:梱包条件も併せて評価
5. なぜ重要?
信頼性の底上げ
市場で壊れにくい製品を提供し、
保証/リコールリスクを低減
共通言語
顧客/サプライヤ間で試験条件を
標準化し、手戻りを削減
開発効率
設計段階から
試験観点を織り込み、
早期の課題抽出が可能
6. 初心者の着眼点(まずはここから)
- 部品の搭載位置を決めると、負荷プロファイル(温度・振動)が見えてくる
- 動作モード(通電/非通電/スリープ)を試験条件に反映させる
- 合否基準(機能、外観、電気特性)を事前に数値化して判定できる形式
- 試験所、試験者の確保(クランキング、ロードダンプ等)は再現波形を準備
7. よくある質問(FAQ)
Q. ISO 16750だけで十分?
電磁両立性(ISO 7637、CISPR 25、ISO11452など)やOEM独自規格と併用が一般的です。
Q. 何から始めればよい?
製品の搭載位置とライフシナリオを明確にし、該当パートの代表試験から小さく着手。
Q. 試験は全部やらないとダメ?
用途に応じたリスクベースの選定でOK。重要イベント優先で段階的に拡張します。
信頼性試験のご相談・お見積り
信頼性評価でお困りのことがございましたら、お気軽にお問い合わせ・ご依頼ください。
経験豊富な技術者がお客様のニーズに合わせた最適なソリューションをご提案いたします。
<免責事項>本ページに掲載されている情報は、ISO 16750規格の理解を助けるための一般的な情報提供を目的としています。
内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
実際の製品設計や試験評価に際しては、必ず発行元から正規に入手した最新のISO 16750規格書原文をご参照ください。
当サイトの情報を用いて行う一切の行為について、何らかの損害が生じた場合でも、当サイトは一切の責任を負いかねますので、
あらかじめご了承ください。