最終更新日:2026年3月12日
【EMC初心者向け】BCI試験実施時の注意点
配策を「記録」すべき理由
BCI(Bulk Current Injection)試験は、注入プローブを用いてワイヤーハーネスへ高周波電流を注入し、 ECUやシステムがノイズ環境下でも誤動作しないかを確認するイミュニティ試験のひとつです。 実作業では、ハーネス配策が結果に強く影響するため、 “同じ条件”で試験できるように記録を残すことがとても重要です。
BCI試験の概要
BCI試験は、車両のワイヤーハーネスに外部から高周波ノイズ(電流)を与えたときに、 ECUがリセットしたり、通信が途切れたり、センサ値が飛んだりしないかを確認するための試験です。 「電波を飛ばす」試験というより、ハーネスに“電流を注入して擬似的にノイズ環境を作る”イメージが近いです。
全線一括印加と単線印加
BCIの印加方法は、試験条件や目的により大きく2つに分かれます。 ECUコネクタから出てくるワイヤーハーネスを束ねた状態で一括印加する方法と、 1本ずつクランプして印加する単線印加です。
| 項目 | 全線一括印加(束ねてクランプ) | 単線印加(1本ずつクランプ) |
|---|---|---|
| 概要 | ECUから出るハーネスを束ね、 注入プローブを一度にクランプして印加 | 対象線を1本選び、その線だけを 注入プローブに通して印加 |
| メリット | 作業が比較的早い /実車の束ね状態に近い | どの線が弱点か切り分けしやすい /最悪線探索に向く |
| 注意点 | 束の構成や締め具合で条件が変わる /特定線の影響が見えにくい | 配策の微差が効きやすい /対象外線の退避が必要 |
全線一括印加は全ワイヤーハーネスをクランプする為、余長がない為、比較的再現性の高い配策が可能です。
重要: 同じ“単線印加”でも、対象外線をどう離すか(距離・方向・固定)で結果が変わることがあります。「印加線だけ同じ」では条件一致になりません。
単線印加で“配策”が効く理由
単線印加の基本:対象線はクランプ、対象外線は離す
単線印加では、対象のワイヤーハーネスを注入プローブでクランプし、 対象外のワイヤーハーネスは注入プローブから離した状態で配策します。 これは「狙った線に注入して評価したい」ための基本ですが、ここで“離し方”が試験結果に直結します。
なぜ離し方で変わる?
- 対象外線が近いと、注入プローブ近傍で電磁結合しやすい
- 束ね方やループが変わると、ノイズ電流の戻り道が変わる
- 金属板や治具の近さで、寄生容量が変わり波形が変わる
“微妙な違い”の典型例
- 対象外線が注入プローブに数cmだけ近い
- 対象線の余長が増えて小さなループができる
- 固定位置が変わり、分岐点の形が変わる
- ハーネス高さが変わり、金属面との距離が変化
現場で起きがちな再現性トラブル
“同じ試験”なのに誤動作が出たり出なかったりする
例えば、別担当者が同じ手順でBCIを実施したところ、ある周波数・あるレベルで誤動作が発生しなかった。 しかし自分が配策を見直して、手順に沿って配策したところ、誤動作が再現した—— こうしたことはBCIの現場で珍しくありません。
経験談ではありますが、私自身、誤動作が発生しないシーンに遭遇することがありました。
試験実施時に誤動作が発生したため設計担当者へ報告。後日、設計担当者がBCI試験を実施すると誤動作が発生しないシーンと遭遇しました。その際はプローブ周辺ではなく、プローブからおよそ300mm程度離れた位置のワイヤーハーネスの配策で誤動作の発生有無が変わるという事があり、配策の重要性を改めて感じました。
FAQ
どのくらい細かく配策を記録すべき?
別担当者が同じ条件を再現できる粒度が目安です。 「離した」「束ねた」ではなく、「注入プローブから対象外線を最短○cm離し、テープで○点固定」のように、 距離+固定方法+写真の3点セットで残すと再現性が上がります。
写真だけで十分?
写真だけでは、角度で距離が読み取れないことがあります。 重要箇所は、写真に加えて「距離(cm)」「結束ピッチ」「固定点」を文章で補うと、迷いが減ります。
誤動作が出ない”方向に配策を寄せてしまうのはあり?
目的次第です。規格適合の評価では「規定の条件」を守るのが最優先です。 弱点探索や対策検証では“効く条件”を探るのも有効ですが、その場合も 意図(なぜその配策か)と差分を明記して、結果の意味がブレないようにします。
まとめ
BCI試験は、注入プローブでワイヤーハーネスへ高周波電流を注入するイミュニティ試験です。 印加方法には、ハーネスを束ねてクランプする全線一括印加と、1本ずつ印加する単線印加があります。特に単線印加では、対象外線の退避距離や固定、余長ループ、束ね方などの配策の微妙な違いで結果が変わり、 “同じ試験のはずなのに誤動作が出たり出なかったりする”ことが起き得ます。
配策は「作業」ではなく「試験条件」です。
写真+寸法+固定方法で細かく記録し、担当者が変わっても同じ条件を再現できる状態を作ることが、BCI試験の品質を上げる近道です。
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