車載ECUの信頼性評価:耐油・耐薬品試験
概要
耐油・耐薬品試験(Chemical Resistance Test)は、車載ECUが自動車の使用・メンテナンス時に接触する可能性のある各種化学物質に対する耐性を評価する環境試験です。エンジンオイル、ブレーキフルード、不凍液、洗浄剤などの化学的作用による材料劣化、性能変化、機能不全を事前に検出します。
自動車は多様な化学物質を使用する機械システムであり、車載ECUはこれらの物質に直接的・間接的に曝される可能性があります。特に、エンジンルーム内に設置されるECUは、高温下での化学物質曝露という過酷な環境に耐える必要があります。

試験の目的
・樹脂材料の膨潤・収縮:有機溶媒による樹脂の体積変化
・可塑剤の溶出:PVC等の可塑剤成分の溶け出し
・応力亀裂:化学物質による内部応力発生と亀裂進展
・表面劣化:化学反応による表面粗化、変色、白化
・接着剤劣化:化学物質浸透による接着力低下
・金属腐食:酸性・アルカリ性物質による金属部品の腐食
車載ECUにおける化学的耐性試験の必要性
車載ECUは以下のような化学的曝露リスクに直面しています:
曝露経路 | 化学物質 | 曝露形態 | リスクレベル |
---|---|---|---|
エンジンオイル漏れ | 鉱物油、合成油 | 液滴付着、蒸気 | 高 |
冷却水漏れ | エチレングリコール | 液滴付着 | 中 |
ブレーキフルード | ポリグリコール系 | 飛散、蒸気 | 中 |
燃料蒸気 | ガソリン、エタノール | 蒸気 | 高 |
清掃・メンテナンス | 脱脂剤、洗浄剤 | 直接接触 | 中 |
道路塩分 | 塩化ナトリウム | 水溶液 | 高 |
主な故障モード:
筐体の膨潤・変形:樹脂筐体の寸法変化による密封性低下
コネクタ不良:端子の腐食、絶縁材の劣化による接触不良
基板汚染:化学物質の浸入による絶縁不良、リーク電流
封止材劣化:IC封止樹脂の亀裂、剥離による内部素子の曝露
表示部劣化:液晶パネル、LED表示の化学的損傷
車載環境で接触する化学物質
エンジン関連化学物質
エンジンオイル
- 鉱物油系:パラフィン系、ナフテン系炭化水素(粘度:SAE 0W-20~20W-50)
- 合成油系:ポリアルファオレフィン(PAO)、エステル系合成油
- 添加剤:酸化防止剤、清浄分散剤、粘度指数向上剤
燃料関連
- 燃料添加剤:MTBE、ETBE等のオクタン価向上剤
- ガソリン:イソオクタン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素
- エタノール混合燃料:E10(エタノール10%)、E85(エタノール85%)
- ディーゼル燃料:軽油、バイオディーゼル(FAME)

冷却・制動関連化学物質
化学物質名 | 主成分 | 濃度・性状 | 主な用途 |
---|---|---|---|
エチレングリコール系不凍液 | エチレングリコール | 30-60%水溶液 | エンジン冷却 |
プロピレングリコール系不凍液 | プロピレングリコール | 30-50%水溶液 | 環境配慮型冷却 |
DOT3ブレーキフルード | ポリエチレングリコール | 純液体 | ブレーキ・クラッチ |
DOT4ブレーキフルード | ポリグリコールエーテル | 純液体 | 高性能ブレーキ |
DOT5ブレーキフルード | シリコーン系 | 純液体 | 特殊用途ブレーキ |
メンテナンス・清掃用化学物質
- 脱脂剤:イソプロピルアルコール(IPA)、アセトン、トリクロロエチレン
- エンジンクリーナー:ケトン系、エステル系有機溶媒
- パーツクリーナー:石油系炭化水素、塩素系溶媒
- ブレーキクリーナー:ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素
環境由来化学物質
- 道路塩化物:塩化ナトリウム、塩化カルシウム(3-23%水溶液)
- 酸性雨:pH3.0-5.0の希硫酸、希硝酸
- 海塩粒子:塩化ナトリウム微粒子(海岸地域)
- 工業汚染物質:二酸化硫黄、窒素酸化物等の酸性ガス
対応する代表的な規格
規格番号 | 規格名称 |
---|---|
ISO 16750-5 | 電気電子部品の耐油・耐薬品試験 |
ー | OEM規格国内・海外含むカーメーカーの独自要求) |
主な試験方法(ISO16750-5の例)
試験温度:室温~Tmax
曝露時間:10min~22h
塗布方法:噴霧(Spraying)、刷毛塗り(Brushing)、拭く(Wiping)、注ぐ(Pouring)、浸す(Dipping)、浸漬(Immersin)
comqudaの特徴
・柔軟に受託試験を対応させていただきます。
・試験のみならず試験前後の特性チェック/動作確認含め、受託にて対応させていただきます。
・通電状態での詳細監視(通信、演算、信号応答など)に対応
・他試験(温度サイクル、振動)と複合条件での委託評価も一括対応
よくある質問(FAQ)
ECU以外の部品も対象にできますか?
はい。センサー、バッテリーユニット、通信モジュールなど薬品が塗布できる製品は評価可能です。
試験後の廃液処理はどのように行われますか?
使用した化学物質は、種類に応じて適切に分類・保管し、認定を受けた産業廃棄物処理業者に委託して処理します。環境負荷軽減のため、可能な限りリサイクルを推進しています。
どのくらいの期間で試験できますか?
弊社所有の薬品塗布で宜しければ即日ご対応可能です。

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