車載ECUの信頼性評価:冷熱衝撃試験
概要
冷熱衝撃試験(Thermal Shock Test)は、電子機器や部品が急激な温度変化に曝された際の耐性を評価する環境試験です。高温と低温の環境を短時間で繰り返し切り替えることで、熱応力による材料の劣化、接続部の断線、はんだクラック等の不具合を検出します。
車載ECUは、エンジンルーム内や車室内において、エンジン始動時の急激な温度上昇、冬季の急激な冷却、エアコンの作動による温度変化など、様々な温度サイクルに曝されます。これらの実使用環境を模擬した冷熱衝撃試験により、製品の長期信頼性を事前に評価することが可能です。
熱衝撃試験、サーマルショック試験と呼ばれることもあります。
試験の目的
・熱膨張・収縮:異なる線膨張係数を持つ材料間での応力発生
・熱疲労:繰り返し応力による材料の劣化・亀裂発生
・接合部応力:はんだ接合部、コネクタ接続部への応力集中
・封止材劣化:樹脂材料の熱劣化、脆化現象
車載ECUにおける冷熱衝撃試験の必要性
車載ECUは、以下のような厳しい温度環境下での動作が要求されます:
設置場所 | 温度範囲 | 主な温度変化要因 |
---|---|---|
エンジンルーム | -40℃⇔125℃ | エンジン熱、外気温変化、走行風 |
車室内 | -30℃⇔80℃ | 太陽光、エアコン、外気温変化 |
トランク・荷室 | -30℃⇔85℃ | 外気温変化、太陽光(リアガラス) |
主な故障モード
はんだクラック:BGA、QFPパッケージのはんだ接合部疲労破壊
ワイヤーボンド断線:ICチップ内部配線の熱応力破断
基板反り・割れ:PCB基板の熱応力による機械的損傷
封止材剥離:IC封止樹脂とリードフレーム間の剥離
コンデンサ劣化:電解コンデンサの電解液漏れ、容量低下
対応する代表的な規格
規格番号 | 規格名称 |
---|---|
ISO 16750-4 | 車載電装品の環境試験方法 |
IEC 60068-2-14 | 環境試験方法-電気・電子-温度変化試験方法 |
JEITA ED-4701 | 車載用半導体デバイスの環境・耐久性試験方法 |
AEC-Q100 | 車載用IC信頼性認定試験 |
JIS D1601 | 自動車用電気・電子装置の環境試験方法 |
ー | OEM規格国内・海外含むカーメーカーの独自要求) |
主な試験条件
高温側温度:80℃~125℃
低温側温度:-10℃~-40℃
各温度保持時間:30分~2時間
サイクル数:100~3000サイクル
標準的な1サイクルの流れ:
- 常温状態 (23±2°C) – 試験開始前の安定化
- 低温曝露 – 設定高温での所定時間保持
- 低温→高温移行 – 規定時間内での温度変化
- 高温曝露 – 設定低温での所定時間保持
- 高温→低温移行 – 規定時間内での温度変化
試験終了後の結露防止のため、低温開始が望ましい。
comqudaの特徴
・ECUのプロファイル測定及び試験前後の特性評価含め対応可能
・温度サイクルや振動試験など、他の環境ストレス試験を包括し信頼性評価を受託支援
活用事例
◦ECU実装部品のはんだクラック評価
◦PCB基板の熱応力による機械的損傷
◦ICチップ内部配線の熱応力破断
よくある質問(FAQ)
冷熱衝撃試験と温度サイクル試験の違いは何ですか?
冷熱衝撃試験は急激な温度変化(通常5分以内)を重視し、温度サイクル試験は比較的ゆっくりとした温度変化(30分~数時間)を扱います。冷熱衝撃試験の方が熱応力による影響をより厳しく評価できます。
どのようなデータが得られますか?
ECU内部が温度飽和するまでの時間(温度プロファイルデータ)、
ECU表面観察結果、断面観察結果など

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